私好みの新刊 2023年03月
『なぜきみたちはグルグル回るのか 海の動物たちの謎』(たくさんのふしぎ11月)
佐藤克文/文 きのしたちひろ/絵 福音館書店
海の動物の謎の行動を丹念に記録しながらいろいろ考えていく過程をマンが調に描い
た本で楽しく読める。最近の動物の行動調査には電波発信機を動物に取り付けてその動
物行動を調べるということがよく行われている。この本は、オオミズナギドリや海ガメ、
ゾウアザラシなどの行動から次々と疑問を解決していく過程が描かれている。
最初にある教授の研究体験談を聞いて若い研究者は「動物たちは、海の上でどうやっ
て帰りたい島の方角がわかるのですか」と疑問を投げかける。教授もまだ「不思議で仕
方ない」と言う。若い2人の研究者はまず岩手県の無人島の調査に入る。電気もガスも
無い島で2人は研究生活に入る。島のオオミズナギ鳥にGPSなどの機器を取り付けると、
〈時々オオミズナギ鳥は北海道沖まで出かけている〉と記録に出てくる。そこで2人に
疑問がわいてくる。「400kmも離れた北海道沖から鳥はどうやって日没に島に到着できる
のか」。教授を交えて議論が続く。どうやら鳥は目的地の方向と距離がわかっている、な
ぜだろう。そこで一つの考えは〈鳥は地磁場を感じているのではないか〉である。そこで
教授は2人に「熱帯の島へウミガメの調査に行ってみないか」と誘う。2人はやがてナイ
ロビ南部のコロモ諸島へ。ここでのサバイバルな島の生活も紹介される。さて、ウミガメ
は数百kmも離れたところでエサを食べてまたもとの島に帰ってくるという。いったいど
うやって方向がわかるのか。記録を見ると、海ガメは島に帰る前グルグルと海中で回って
から方角を決めていることがわかった。外国の研究者に問いかけると、そういう例はサメ
やクジラなど他の魚にも見られるという。陸上の犬も方角を感じているようだ。どうやら
野生動物には地磁気を感じる能力が備わっているのではないかという仮説が一つ検証され
た。真実はどうだろうか。こんどは南極で実験したら等と意見も出る。まだまだ研究途中
らしいがその経過が面白い。 2022年11月 770円
『だれのほね? ぼくたちきょうりゅう』 たけうちちひろ/文・切り絵
福井県立恐竜博物館/監修 出版社ワークス
恐竜の本はたくさんあるが、ちょっと風変わりな本が出た。しかも、体裁から見ても幼
児から楽しめる。著者は切り絵作家のたけうちひろしさん。骨のイラストを見て恐竜の種類
を当てる趣向の本。子どもたちはありったけの知識を総動員して恐竜時代のあれこれ思い浮
かべるだろう。一部、恐竜以外の爬虫類も含んでいる。
まずは、「あたまにツノが2本・・・」が出る。他の骨はバラバラ。さてなんという恐竜だ
ろう。ページをくると左に骨の完成イラストが出て右ページにその恐竜の絵と名前が出る。
次はバラバラにくだかれた骨、「だれのほね?」とある。「からだは かたいよろい。」で見当
がつくか。次をめくると、左に骨の完成イラスト。背中にたくさんのよろいが並んでいて体
全体にもこぶが見える。右ページにこの恐竜のイラストが出る。こんどもばらばらの骨。「せ
なかの いたがおしゃれでしょう。」と書かれている。よくみると五角形の板状の骨がパラパ
ラと並んでいる。さて何の恐竜なのか。次ページをくると・・、背中に五角形の板が並んで
いる。はっきりとした五角形ではないが2列にならんでいる種がいる。まあ切り絵なので整
然と一列に並んでいても仕方ないか。次は、「おおきな くちばし」が目につく。全体の骨も
少なげ、小さい恐竜か。めくると、右ページに細長い歯のない翼を持った翼竜が出る。こん
なのも恐竜時代には飛んでいた。次は、「おおきなからだ。およぎが じょうず」と出る。頭
や手足の骨も大きい。大型の恐竜かもと思っているとあけてびっくり、まるでクジラ。これ
は海生の爬虫類らしい。次は、大きな恐竜全体の骨格イラスト。これはまぎれもない大型恐
竜。恐竜好きの子どもはすぐに答えるかな。最後は一面ばらばらの骨。恐竜4体の骨らしい。
アンモナイトの殻も見える。子どもとともに恐竜時代のイラスト散歩が楽しめる。
2022年7月 1,800円
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